JIN SEINO KIR ONIT ATSU
志保と次は割り勘で食事に行く約束をしてからは、LINEでよくやり取りを交わしていた。
お互いのバイト先が近く、職種も居酒屋で同じだったこと、家も近く同じ方向だったこともあり、バイト終わりにいっしょに帰ることが多くなった。
彼女の家の前の公園のベンチで、よく話をした。
どんな話をしただろう。
もうよく覚えていない。
夢の話をしたり、今日出会ったおかしい客の話をしたり。
季節は夏を待つ6月だった。
何度目だろう。
志保の家の前の公園のベンチで、いつものようにおしゃべりをしていた。
ふと、お互い無言の時間が流れる。
しかし、これもいつものことのように感じていた。
お互いが喋り疲れ、ただ夜風にあたって和んでいる。
気まずい空気は流れない。
居心地の良さに、お互いが無言を選択しているような、不思議な時間だった。
私にはわかっていた。
自分の気持ちがわかっていた。
好きだった。嘘偽りなく、志保のことを好きになっていた。
ただ、当時22歳だった私に対し、彼女は19歳だった。
歳の差は言い訳に過ぎなかったのかもしれない。
気持ちの問題だった。
槇原敬之ばりに、もう恋なんてしないと思っていた私は、小田和正もびっくりなほど、また誰かを愛していた。
そう、今この現実は、偶然でも運命でもなんでもない。
私が彼女を好きになり、たぶん、彼女も私を好きになってくれたのだ。
そう思った時、私は、隣に座っている彼女の唇にキスをした。