NARE SO ME
志保と最初に出会ったのは、大学4年の5月だった。
その日、大学のサークルで新入生の歓迎会があった。
大学生とは、酒を飲む生き物である。どこかの偉い人がそんな言葉を遺してくれていれば、私の大学生活も少しは報われるのかもしれない。
それほどまでに、私は酒に飲まれていた。
1年生の頃、海の近くの旅館にサークルの仲間と泊まりに行った時、夜中に突然海の方へ走り出し、そのまま行方が分からなくなってしまったらしい。
最悪の事態を想定した友人たちは必死で探したそうだ。
結果的に海の家のテラスの下で寝ていたらしい。
2年生の頃、帰省した時にカラオケで飲んだ後、友人がコンビニで買ったフライドチキンを一口くれと言ってそのまま口に咥えて強奪、走り出し、交通量の多い横断歩道を赤信号で突っ切った。
その光景を見ていた友人は、「あいつ終わったな」と振り返る。
もちろん、私はちゃんと生存している。ちなみにフライドチキンは道端に吐き捨ててあったみたいだ。
3年生の頃、年末に吉祥寺で年越しした日も、酩酊し、友人宅のアパートの外階段の途中で力尽き、真冬の寒空の下、元旦の朝に近隣の住民に救急車を呼ばれ、その中で目覚めるということもあった。
ほんの一部振り返っただけでも、これだけ酒の失敗がある。よく生きていたなと思う。
例に漏れず、酒癖の悪い私は居酒屋を出た記憶すらないまま、自宅の最寄りの駅前の花壇で寝ていた。
私の記憶があるのは、自宅の前に着く10分ほど前からだ。
気がつくと、目の前を白いミニスカートの女の子が先導してくれており、なにかを話していた。
(誰だ?)
知らない人だった。
どういう経緯かは知らないが、寝ていた私に水をくれ家がおなじほうがくだったので送ってくれたようだ。
その女の子が志保だった。