【公式】たくらふのブログ

嘘でも本当でもない夢現な日常ブログ

ヒカルの碁

ゴーゴー!囲碁ー!

 

ズンチャッチャッチャッ♪

チャンチャチャチャーンチャチャーン♫

 

おそらく4週目くらいの、ヒカルの碁のアニメ完走を果たした今、思うことがある。

なぜこれほどまでに心奪われてしまうのか、と。

ちなみにこれを見るたびに、碁に興味を持って、アプリなぞやってみるのだが

未だに定石すら覚えない。どへぼだ。

しかしこんな私でも、ヒカルの碁は面白い。

本格囲碁漫画であるのに、囲碁を知らなくても楽しめる、のめりこめるだけでなく、巻き込んでしまう求心力が、この作品にはある。

 

その正体は、何か。

人それぞれあるだろう。

 

しかし、ヒカルの碁に一貫するテーマがひとつあるとするのなら、私は【Get Over】だと思う。

Get Over はアニメ版第一期オープニングテーマの曲名でもある。

直訳すれば、「乗り越える」という意味。

 

とある碁盤に宿った平安の天才棋士、藤原佐為(ふじわらのさい)は、1000年の時を経て、進藤ヒカルの元へ蘇った。

神の一手を極めるために…。

ヒカルは佐為(さい)とともに、さまざまな経験を通じて、プロの碁打ちとなる。

宿命のライバル・塔矢アキラとともに、神の一手を極めんとし、果てなき道を進むのである。

 

この作品の魅力は語り尽くせぬほどあるが、

先に述べたGet Over、このテーマに絞ると、同名の曲の歌詞と含めて、魅力がすごいのだ。鳥肌が止まないほどに。

 

ちなみに、佐為は魂の姿なので、ヒカル以外の人間には見ることができない。

ヒカルは佐為と出会った当初、囲碁に興味はなかったが、佐為の熱心さに押されて足を運んだ碁会所(囲碁を打つための集会所)で、塔矢アキラと出会う。

 

第一のGet Over(以下GO)は、この出会いから始まる。

 

塔矢アキラの父親は、プロの棋士だ。

しかも最強(いろんなタイトルを保持している)、いわゆるチャンピオンと言っても過言ではない。

そんな父に幼い頃から囲碁を仕込まれ育ったアキラもまた、類稀なる才能を持っている。

小学6年生ながら、すでにプロになれる技量がある。これは、プロになるのは若い方がいいと言われている囲碁界でも、注目を浴びるほどの年齢だ。

 

ただ、佐為も負けてはいない。

平安の世で貴族の囲碁の指南役(碁の先生)として宮中に呼ばれるほどの腕前を持ちながら、志半ばで自ら命を断つ。

しかし、その無念の魂は再び、江戸の世で虎次郎のもとに蘇った。

虎次郎は佐為の望みを聞き入れ、多くの者と囲碁を打ち、後に本因坊秀作(ほんいんぼうしゅうさく)と呼ばれ、1000年後の現代でも最強の棋士と呼び声高いほどの偉人となった。

虎次郎は佐為の好きなように打たせてやっていただけなので、つまり、現代にまで伝わる伝説の棋士本因坊秀作=佐為なのだ。

 

話を戻そう。

 

ヒカルのもとに蘇った佐為と、塔矢アキラの出会いについてだ。

 

神童と呼ばれ、いずれ父親と同じ道を歩み続けることを自覚していたアキラの前に、同い年の子供・進藤ヒカルが現れた。

佐為の言う通りに打つヒカルと対局(囲碁でバトルすること)し、そして、その強さに圧倒される。

これまで味わったことのないほどの高い壁に、アキラは敗北し、挫折を経験する。

しかし!!

アキラはヒカル(を通して打つ佐為)の強さを認め、恐れはしても、決して逃げることはしなかったのだ!

GOしようとしたのだ!!

GO!アキラGO!!

 

もう一度、ヒカルを倒すために対局を挑むが、またしても大敗を期す。

 

ヒカルも佐為との触れ合いの中で少しずつ囲碁に興味がわき始め、自分でも囲碁を打ちたいと思うようになり、中学校に進学と同時に囲碁部に入部する。

塔矢アキラは学校こそは違えど、ヒカルを追って囲碁部に入る。

本来であれば部活には所属せず、プロ試験を受けてプロになるはずだった。

しかし、ヒカルを倒すためだけに囲碁部に入部したのだ。この執念。

そして迎えた中学囲碁大会。

ヒカル(佐為)とアキラの3度目の対局だ。

対局前、ヒカルと対峙したアキラの手は恐れで震えていた。それほどまで恐れる強敵からアキラは逃げずに立ち向かってきたのだ。

アキラが佐為を追うこの姿に、ヒカルは感化され、佐為とアキラの対局中に、自分で打ちたい!!と思うようになる。

そして、ついにヒカルは途中から自分で打つのだが、アキラとの力の差は歴然だった。

ヒカルの弱さに、アキラは憤慨した。

「ふざけるな!!!」

 

アキラは行き場の無い気持ちを抱え、ヒカルの前から姿を消した。

ヒカルは自分の弱さを痛感し、しかし塔矢アキラをいつか超えて見せると心に誓うのだった。

 

超えることのできない壁に諦めずGOするアキラ。

これが第一のGO。

 

そして、佐為を追うアキラを、ヒカルがGOするのだ。

このGOの連鎖。たまらねえ…!

 

ヒカルはアキラを追うためにプロになろうと決意する。

囲碁部の大会の後、アキラはプロ試験に合格し、プロとなっていた。

ヒカルも1年遅れでプロ試験に臨むべく、院生(囲碁の塾の生徒のようなもの)になった。

 

しかし、プロへの道は険しい険しい…。

ヒカルは受験者たちとの熾烈な対局の中で、己の未熟さ、弱さに打ちひしがれる。

しかし、佐為と共にそれをGOしていき、確固たる自信をつけてプロへの切符を掴みとったのだった。

 

そう、佐為を追う塔矢アキラのGOが、アキラを追うヒカルのGOへとつながっていくのだ。

見事。鮮やか。

 

そして、絶対的強者である佐為は、自身の命運を悟る。

ひょんなきっかけから塔矢アキラの父親、塔矢広洋と佐為の対局が実現したのだ!

最強VS最強。

 

もちろん、塔矢広洋は佐為のことを知るはずもないので、ヒカルの知り合いのネット碁しか打たない友人として、だが。

インターネット囲碁で、このドリームマッチが繰り広げられる!

序盤、塔矢広洋の最強たる底力が、今までの対局者の中で最も佐為を追い詰めた!

しかし、佐為の底知れぬ読みの力によって、じわじわと追い付き始める。

 

そして、終局まで読み切った塔矢広洋が出した答えは、「投了」。

つまり、サレンダー、自ら負けを宣言したのだ。

この対局は世界中のネット碁ユーザーが注目し、プロも「名局」と言わしめる伝説となった。

 

この2人の対局を間近で観戦したヒカルは、静かに語り出す。

「ここ、」

盤面の角を指し、続けた。

「この黒で、塔矢先生はこの切断に備えたろ?

必要な一着だって、誰でも思うよな…

でも、ここをこう打った手で、ここを置きにいけば

ほら!

こう打った手で、実戦より得してるじゃないか!

佐為の負けだ!」

わたしは囲碁をやらないから全くわからなかったが、要は、実際に対局していた佐為も塔矢広洋も気づかなかった一手に、ヒカルは気付いたのだ。

そして、その一手がこの勝負の真の分かれ目。

この一手こそが、「神の一手」なのだ。

 

佐為は悟る。

自分が現世に蘇った理由を。

ヒカルの元へ蘇った理由を。

この一局をヒカルに見せるために、佐為は蘇ったのだ、と。

 

鳥肌だ。

名シーン。何度見ても震える。

 

佐為は自分の役割を終えた。

現世にいられる時間が、容赦なく減っていくのが実感できるようになる。

 

結果、佐為の魂は成仏する。

虎次郎が佐為のために存在したように、佐為はヒカルのために存在したのだ。

あの塔矢広洋との一局を見せたことで、ヒカルは秘められた才能を開花させることになった。

 

しかし、佐為が消えるその時、ヒカルは寝ていた。

別れはいつも唐突に訪れるものなのだ。

佐為が消えた理由を知ることのないまま、佐為が消えたことに絶望する。

ヒカルは佐為への自分の言動について後悔し、自分なんかじゃなく、佐為にもっと打たせたら良かったんだと嘆く。

 

そして、佐為が戻ってくることを望み、佐為に打たせるため、自分で囲碁を打つことをやめた。

 

しかし、あるきっかけからある人物との対局の時、自分の打ち方に、佐為の面影を見る。

あんなに会いたかった佐為は、ヒカルが打つ碁の中にひっそりと隠れていたのだ。

そして、長く険しい、神の一手を極める道を歩む覚悟を決めたのだった。

 

ここが第3のGO。

超えられない佐為という壁であり、かけがえのない友人。そして、その喪失。

佐為を追ってきたアキラに応えられない自分の頼りなさ。

そういったさまざまな苦悩を、GOして成長したのだ!!

ヒカルのGO!

 

魅力はこれだけではない。

語り尽くせない。

 

Get Over という曲がとにかくストーリーにあっている。

1期のオープニングであるGet Over がアニメ版最終話に流れる演出は、アニメ界屈指の名演出だろう。

 

とにかく、一見の価値はある。

囲碁に興味がなくても。

 

 

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